勉強会

医師日記

急性期病院と言われるような救急医療体制を整えている病院は常に勉強会を開催し、最新の情報や一般的な医学知識・教養を高めている。

私の勤めている総合病院も定期的に勉強会を開催している。

勉強会の内容は、例えば褥瘡(いわゆる床ずれ)予防管理などのナーシングケアについて、薬剤師からの抗生剤の知識について、臨床工学技士からの医療機器の使用説明、医師から疾患別の知識やその治療対応について、など病院に関わるあらゆるテーマが取り扱われる。

ただ医師の参加率は様々な理由で低く、医師が主宰になることは少なかった。

なので、私も現在今の病院に勤務してから2年経過しているが、勉強会を主催するどころか参加したこともなかった。

ただ先日、おそらく相当な覚悟だったと思うが、救急外来の看護師長から勉強会を開催してくれないか、とお願いされた。(おそらくにべもなく断られると思っていたのではないだろうか。)

勤務時間外にも関わらず勉強会を開き参加して、常に医療技術と知識をブラッシュアップし、そしてそれを患者さんに還元しようとする姿勢に尊敬の念を抱かずにはいれない。

二つ返事で了承したら、とても意外な顔つきで感謝された。

前回は去年12月の暮れに「脳梗塞・超急性期」について勉強会を開催した。

いわゆるアルテプラーぜ静脈注射療法と血栓回収療法について。

ここでは特に治療内容について説明はしないが、とにかく適応基準を守らないと大きな合併症につながる。

しかし患者は急にくるわけなので咄嗟に適応基準について思い出さないといけない。

なのでその適応について学び覚えることは、医師だけでなく看護師、放射線技師、薬剤師も関わることであり、コメディカル全体に必要なことである。

とはいえ実際の治療はどのように行われているのか、それが見えてこないと、ただの知識の暗記になってしまい、どうしても記憶に残らない。

その疾患の担当にならない限り、治療の実際を見ることができず、最悪の場合ぶっつけ本番でいきなり医師のサポートに入らないといけない。

なので前回の勉強会は適応や非適応について羅列するようなスライドはただ数秒紹介したのみで、実際の現場対応について、また治療効果について視覚に訴えるようなものにするよう努めた。

例えば血栓回収して大血管の完全閉塞を完全再開通させた画像・動画と患者さんが回復した事実について示すことは、その医療内容の効果・実態を目の当たりにすることになり、そのエピソードとしては強烈で衝撃的であるため記憶に残りやすく、また医療のモチベーションが高くなる。

実際にそれ以降、脳梗塞・急性期患者に対する受け入れの意欲について積極的でコメディカルたちの対応も今以上に迅速になった。

今勤めている総合病院は総合的に急性期を受け入れられるような病院では経済状況的にないようだが(医療機器がどの科も数世代前の機材)、人材には偶然にも非常に恵まれた環境のようであるよう。

昨日は「くも膜下出血」についてだ。

前回に倣って、あえて医療に直結するような暗記項目には時間を割かず、手術動画など普段医療現場で見れないような動画を揃えて、エピソード記憶として残るように努めた。

しかし前回の勉強会と違うのはくも膜下出血の治療対応は医師・病棟・手術室看護師の対応範囲が分担制になりやすく一緒に対応することが少ないので一体感が感じにくいものであり、前回よりもモチベーションをあげやすいスライドがつくにくいという一面があった。

前回の勉強会は比較的反響があったようで、すぐに2回目の勉強会主催の依頼がきたため1カ月空けただけの2度目の勉強会になったが、今回不人気であればしばらく勉強会の依頼はこないだろう。

患者さんに対する病状説明がわかりやすいと言われることは、自分にとってストロングポイントだと自覚していたが、全体に対するプレゼンはいかに難しいというのがわかった。

慣れてウィットに富んだプレゼンができるようになりたいものだ。

プレゼンするということは自分の知識の再確認になるため有意義だが、大人数の前でのプレゼンに対する慣れや実力アップという面でも自分のためになるものだと実感した。

今後も依頼あれば積極的に受け入れようと思う。

30代後半の医師、専門は脳神経外科。医局の出世レースから早々に弾き出され、田舎の病院でシコシコ診療をこなしていた。つい最近結婚して、ほぼ同時期に妻の妊娠が発覚した。毎日同じような診療をこなすことしか能がない医師が、ついに子育てという超一大事業に立ち向かうことになった。スーパードクターとは程遠い平凡な医師が幸せ家族計画を立ち上げてさまざまなことに挑戦している奮闘記ブログ。

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